落語的了見

第16回 洗脳

コマーシャル、やっていることは「たいこ持ち」

洗脳の話。現代社会にはいたるところに洗脳がある。別にどこぞの新興宗教云々(うんぬん)の話ではない。コマーシャルなんか洗脳の代表だ。有名タレントが出ているだけでその商品を信用してしまう。だが冷静になって考えていただきたい。その有名タレントが本気でその商品を大事にしていると思うかい? 多額のギャラが入るから出ているのだよ。名前を売りたいから出ているのだよ。そんなに信じなさんな。

まあコマーシャルに出ることが有名になる早道だからタレントに罪はない。ただアーティストと呼ばれている、あるいは自分でそのつもりでいるタレントがしゃかりきになってコマーシャルに出ているのを見ると哀れでならない。ミュージシャンが消臭剤の歌を真剣に歌っているコマーシャルがあるが、やっていることは「たいこ持ち」だぞ。みっともないなあ。

テレビの通販番組なんか、すさまじい洗脳だ。私もずいぶんと買ってしまった。掃除機にベッドにマジックセット。たいしたものはなかった。英会話CDも買ったよ。「聞き流すだけで英語ができる」ってやつ。

「新聞で正しいのは日付ぐらい」

ところで私は新聞を読まない。スポーツ新聞はとっているが、一般紙はとっていない。よく子どもに「新聞ぐらいは読みなさい」と教育するが、あれは子どもが文字離れをしているから、新聞ならば手軽に読めるだろうということだ。私は、子どもには、新聞なんか読む暇があったら良い小説を読ませたい。

新聞の何がいけないのか。師匠の談志が生前言っていた。「新聞なんか嘘(うそ)だらけ。正しいのは日付ぐらいのもんだ」。人々は新聞が正しいと思い込んでいる。新聞こそ真実であると信じている。これが危ない。新聞によって右派左派があるのだぞ。それほど強烈に主張してはいないが、毎日読むものだから少しずつ影響されることは間違いない。

たとえば小沢一郎(おざわいちろう)という政治家がいる。好き嫌いは置いておいて、今日日本人で彼を悪党だと思っている人のなんと多いことか。確かに胡散臭(うさんくさ)いことはしてきた。裁判にもなった。でも彼は有罪判決を受けたわけではない。なのに多くの人は小沢一郎が悪いことをしたと思っている。

我々が小沢一郎に関して知っていることはほぼマスコミによる情報である。これって怖くないですか? マスコミは悪役を作りたがる。そしてそれを叩く。

談志に対して手のひらを返したマスコミ

談志がその昔、落語協会を脱会して師匠の小(こ)さんに破門された。新聞をはじめとするマスコミは談志を叩き、小さんを是(ぜ)とした。談志は、客と喧嘩(けんか)をしたとか、酔っ払って記者会見をして沖縄開発庁政務次官を辞めたとか、確かに乱暴な行動はあったが、それと脱会騒動は別問題。それなのにマスコミは小さん師匠の肩を持った。

しかし高田文夫(たかだふみお)先生とビートたけしさんが談志の弟子になった、マスコミは談志を持ち上げ始めた。「大人気のビートたけしが談志を支持するのだから談志の行動もあながち間違ってはいないのではないか」ということだ。それこそ手のひらを返す行動であった。マスコミなんかそんなものなのだ。談志が死んだとたんに「良い人」になってしまったのもマスコミによるものだ。

以前、何かの事件で逮捕された女の官僚がいて、ニュースでその顔を見た時、悪いことしそうな面(つら)だと誰もが思った。しかしそれが誤認逮捕だとわかり、涙ながらに会見している姿を見たら、気の毒なおばちゃんだなと思った。怖いよね。

新聞は怖いものなのだ

話を小沢一郎に戻す。もし良い人だったらどうするんだ? 「壊し屋」と言うが、これもマスコミの言ったこと。もし新聞が、「壊すのは素晴らしいことだ」と書き続けたら? 「自民党だけに縛られている政界を正すために、何べんも納得のゆくまで新しい政党を作っては壊し、理想の政党を生涯かけて模索している。この行為は停滞する政界に常に刺激を与え、国民に関心を抱かせている!」と毎日、新聞が訴え続けたら?

もしかしたら小沢一郎は素晴らしい政治家になっていたぞ(断っておくが私は小沢一郎支持者ではないよ)。陸山会(りくざんかい)の件で立件されても、国民は「あの人がそんな悪いことをするわけがない」と思うぞ。

新聞は怖いものなのだ。戦争中、日本人が本気で外人を「鬼畜米英」と思っていたことだって、新聞の影響が大きかったのではなかったのか。「敵国の人間だって血の通った人間だ」なんて書いた新聞はない。

週刊誌のゴシップ記事なんかも、我々は「所詮(しょせん)週刊誌」とは思ってはいるが、いつの間にか信じてしまうではないか。「あのスターはまるでストーカーだった」なんという記事があると、ついつい「あいつ、あんな顔して悪い野郎だ」と思ってしまうが、本当のところはわからない。もしそのスターがとんでもない女に付きまとわれて困っている、という記事が出たら我々は「気の毒に」と思うのだ。

東スポぐらいになれば、「ほとんどが嘘だろう」と笑えるが、実は他の新聞も全部、東スポと同じようなものだと思っていた方がよいのです。

2013年4月11日更新

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