会社の「これ本当に必要?」

第1回 組織に殺される創造性や起業家精神

「ゼロベースで考える」とは?

個人の能力を活かすための組織のあり方が問われています。それはこれまでの大部分の組織の前提となっていたのが、日本が急速に成長していた、いわゆる「失われた20年」以前のビジネスのやり方だからです。

一言で表現すれば、それは画一的な製品を効率的に安価で市場に提供していくというモデルで、そこでは「平均点を上げる」ことに重点が置かれており、教育システムや社会全体の考え方も「結果の平等」に重きを置いた没個性的な思想が支配的でした。

ところが様々な環境変化によってこの成功モデルを転換しなければならない時期が来ているにもかかわらず、多くの会社組織の運営の基本的な考え方は変わっていません。したがって新しい時代に必要な創造性や起業家精神、あるいは個性といったものが組織によって殺されてしまっているというのが現状です。

本連載では、そうした組織の旧来のパラダイムをリセットし、新しい時代のニーズに合った組織とはどうあるべきかをゼロベースで考えることにします。毎回、旧来組織にとって象徴的な仕組みや事象を取り上げて、それが新しい時代でも本当に必要かどうかを検証するところから始め、そもそもそれがないとしたらどういう仕組みが考えられるかを考察していきます。これは個人としての「新しい働き方」とセットになって語られるべきトピックであると考えます。

なお、あくまでもゼロベースで考えるのが目的ですから、現在の法律や暗黙のルール等についてもすべて疑ってかかるというのが大前提です。本連載においては、会社の運営にかかわるすべての常識を「疑ってかかる対象」とします。

「一般会社員」と創造性

連載第1回の今回は、旧来型組織と新しい組織がいかに対照的に異なっているか、その基本的なコンセプトについて明確にした上で、次回以降の各論に入っていきたいと思います。

まずは二つのタイプの組織が前提とする考え方を整理したものが下表です。

旧来組織 新しい組織
成長期 成熟期
マスのニーズに対応 個別ニーズに対応
国内中心 グローバル
自前主義 オープンイノベーション
閉じた系を前提 開いた系を前提
オペレーション重視 イノベーション重視
連続性を前提 不連続性を前提
平均レベルを上げる 上を尖らせる
画一性重視 多様性重視
効率性重視 創造性重視

旧来の組織の前提は戦後の成長期を支えたモデルで、同じビジネスが長期にわたって安定的に成長することを前提とし、あくまでも国内でのビジネスを最適化することが絶対的な必要条件でした。また開発、生産、営業といった社内の機能も自前ですべて提供するというのが基本的な考え方でした。

これに対して、いま求められているのは、成熟した市場、個人別に多様化したニーズ、グローバル環境を前提とし、最適な組織のあり方や運営方法を外部から取り入れるオープンイノベーションです。

組織としての価値観も異なります。旧来型組織では閉じた系を前提とし、イノベーションよりは日々のオペレーションを効率的にまわしていくことを重視し、人材も平均的にレベルの高い人を画一的にそろえてきました。

もちろん従来から「創造性」(クリエイティビティ)が重要であることは語られてきましたが、本当にそれが日常的に必要なのは芸術家やクリエイター等、ごく一部の特別な人であるというのが一般的な認識でした。「一般会社員」にはあまり必要ではなく、どちらかと言えば「決められたことを速くやる」とか「仲間と協調性を持って仕事を進める」ことが圧倒的に求められていたのです。

それが前述の環境変化によって、一般会社員であっても創造性が求められる時代になってきました。多くの人たちにとってはまだまだその実感はないでしょうが、例えば創造性を求められるのが一般会社員の2~3割であるとしても、元の母数が大きいだけに大変な数になります。

つまり、多数派を占めるのは依然として従来型の考え方ではあっても、組織全体をその論理で運営することには無理が出てきているということです。したがって、ここでいう「旧来型の組織」が「新しい組織」にすべて置き換わるのが適当であるというよりは、徐々に割合が増えてきた「新しいニーズ」に対しての新しい組織の形態を提案する、というのが本連載の正確な位置づけです。

次回以降、旧来型組織で見られる事象の一つ一つについて「本当に必要?」を検証した上で、ではどうするかについて考えていきたいと思います。

2013年9月12日更新 (次回更新予定: 2013年10月30日)

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