落語的了見

第23回 ジュース

プラッシー、バヤリース、カルピス

酒は百薬の長だが、ジュースは果たしてどうなんだという話である。私の指すジュースとは巷(ちまた)にあふれている甘い飲料水のこと。

でも、そもそもジュースとは、果汁100パーセントの飲料水のみを指すものらしい。日本では1960年代後半に不良ジュース追放運動なるものが起こり、以来100パーセントでないものはジュースと名乗れなくなった。粉末ジュースなんてもってのほか。そういえばコーヒー牛乳も現在ではコーヒー飲料だもんね。

で、何が言いたいかというと、甘い飲料水、まあジュースです、面倒くさいからJASの規定は無視して甘い飲料水をジュースと呼ぶ。ジュースは何の為(ため)に存在しているのだろうか。酒のように酔うわけでもなく、ただただ甘いだけ。そりゃ昔は甘味に人々が飢えていた。だが今は甘味なんぞいくらでもあろうに。

私の子供時代(昭和40年代)には、これほどジュースは氾濫(はんらん)していなかった。甘い飲み物が欲しいとせがむと母親は砂糖水をこしらえてくれた。どこの家庭も麦茶に砂糖を入れていた。ジュースといえば米屋のプラッシーか、バヤリースか、あとはカルピスくらいである。

麦茶に砂糖が懐かしい

現在、自動販売機にどれだけの種類のジュースがあるのか。そりゃ人間は甘い飲み物を飲みたい。だがその糖分たるや、大変な量だ。身体に良いわけがない。

コーラなんかは風邪に効くなんて話を聞いたことはある。ヨーロッパでは子供が風邪をひくとホットコーラを飲ませるのが常識だなんて話を聞いた。私も風邪をひくとコーラを飲んでいる。こういったジュースもあるが、大半は人間に余計な糖分を与えているだけではないのか。

健康志向に世の中が変わるとジュースたちもカロリーオフなんてものに姿を変えた。でもまったくのオフではなく、オフと言っていい基準ギリギリの糖分は入っている。何だか騙(だま)されている気分になる。「本マグロ丼ですよ」とうたっていながらびんちょうマグロが二切れだけ乗っているみたいで嫌だ。

何を怒っているかというと、私はジュースが好きなんですね。世の中に100パーセントジュースしかなかったら実に健康体になっているはずなのに、次から次へと色々なジュースが現れるからその誘惑に負けて飲んでしまう。結果、余分な糖分を摂取している。

これだけ世の中に氾濫しているのだからもっと身体に良いものを作りなさい! まあ私の自制心がないだけだが。

だが、アダルトビデオの出現により本物のエロスが消えたように、特定のものの氾濫は世の中を変えるのだよ。甘い飲み物の氾濫もしかり。健康志向と言いながら、体に悪いものがどんどん売られている。本当に健康志向なのか? みんな騙されている。

ああ麦茶に砂糖を入れていたころが懐かしいよ。

2013年12月1日更新 (次回更新予定: 2014年1月1日)

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