『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)の先行購入・寄付プロジェクトがスタートしました。
【書籍概要】
●書名(仮):新編 日本一醜い親への手紙
●編著者:Create Media
●選者:信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長、臨床心理士)、東小雪(元タカラジェンヌ、LGBTアクティビスト)●刊行予定:2017年9月下旬
*なお、本書に収載する「手紙」は広く一般公募しました。募集は2017年7月3日をもって締め切らせていただきました。ご応募、ありがとうございました。
以下、動画とテキストで、『日本一醜い親への手紙』の一部をご紹介します。
高校三年の夏、酔って帰ってきた父上に私を押し倒させ、必死でもがく私をにやにや笑いながら一時間も見ていたあなたの顔を、私は一生忘れることができないでしょう。それでも、今は大切な婚約者がいて、幸せな大人になることができました。婚約者のお母様は、私の母の日の贈物を心から喜んでくださいます。人生、なかなかバランスが取れるもののようです。「いけにえの時間」にそろそろ幕が降りるようです。私はこれからは、こういうまともな方と平和に生きていきたいと思います。
Y・S(9歳)小学生・福岡県・♀
お父さん、もうわたしに会いに来ないで。別れてくらすようになって五年たつけど、お父さんが来るころになると、お母さんもいらいらするし、わたしもいやな気もちになるから、本当は会いたくありません。お父さんは、わたしが小さかったから、お母さんについていっただけだと思っているみたいだけど、わたしは、お母さんにみかたしてお父さんがきらいなんじゃない。それもちょっとあるけど、それだけじゃありません。お父さんは、きっともうわすれてると思うけど、大切なやくそくをやぶった。わたしはまだ三さいだったけど、あんまり悲しかったので、はっきりおぼえています。あのころ、うちにどじょうがいたよね。お父さんが川でとってきたのをくれたから、水そうに入れて、かっていました。遠くへひっこすことになったとき、お母さんが、
「金魚やこいならともかく、どじょうは持ってかないやろ。もとの川に放してやったら」
と言って、お父さんも、
「うん、そうすりゃええ」
と言ったから、わたしは、どじょうたちに、
「ひっこしの前の日になったら、川に帰してあげるね」
と言っていたのに、その日になったら急に、
「やっぱり食べる」
と言い出したんだよね。
お母さんが、
「子どものペットじゃないの。あたしはイヤですからね。食べたかったら、自分で料理してください!」
と言っているのを聞いて、お母さんもおこっているから、やめてくれればいいと思ってたけど、お父さん、本当に自分でみそ汁に入れて食べちゃった。からっぽの水そうの前で、わたしがどんなきもちだったかわかる?
「もうすぐ川に帰れるよ」って、どじょうたちにやくそくしたのに。動物にしたやくそくでも、やくそくはやくそくなんだよ。
今はお母さんががんばって、けっこう楽しくやっています。でも、あのどじょうたちのうらみはわすれないからね。今、お父さんが死んでも、かわいそうと思うかどうか、わかりません。
いつも冷たく、何もしてくれない、怠け〝物〟で豚みたいな母。食事も洗濯も家事もいっさいしない母。そんな母をナマブタと心の中で呼んだ。小学生の頃、いつものと違う風邪をひいた。そんな時、ナマブタは何をしてくれたのか?手間がかからないとばかり、家を留守にし、僕を置き去りにする。苦しくて、辛いのに、何もしてくれない。自分で薬局へ薬を買いに行きたいけど、僕にはそのお金も体力もない。あるのはただ苦しむ体だけ。ただの風邪のはずなのになぜか歩くのがつらい。当然、食事もつらい。食欲がなくても本能的に食べたいと思うけど、冷蔵庫には何もない。あるのは、腐ってひからびた、ご飯だけ。でも何かを食べなくちゃいけないから食べた。まるで、小石を食べているような感覚がある。ぜんぜんおいしくない。具合がわるくなってから三日目、最後にナマブタをみてから三日目、ナマブタが帰ってきた。てっきり僕を優しく看病してくれると思ったのに、……何もしてくれない。ただ「学校には連絡しておいたから、ずっと寝てなさい」って言うだけ。心配する気持ちなどどこにもない。僕には肉親がナマブタしかいないから、母しか頼れる家族はいない。母に捨てられたら僕は一人。出したくても出ない声で〝待ってよ、お母さん、僕は病気なんだ。苦しいんだ。助けて〟そう言いたかった。でもナマブタは僕の目すら見てくれない。汚物以下のようにしか見てくれない。
帰ってきてから三十分もたたないうちに、ナマブタはまた出ていく。再び僕は一人になる。こんなナマブタは母じゃない!僕を苦しめ、殺す悪魔だ。そう思った。けど……僕には心で叫ぶことはできても、それ以外は何もできない。ただじっと待つしかない。食べ物がないから水だけを毎日飲んでいた。だからかもしれないけど、だんだん手足が動かなくなる。なぜか手足に感覚がなくて痺れる感覚しかない。でも一瞬こう思った。〝お母さん、なんでそんなに僕を嫌うの?僕はお母さんがこんなに大好きなのに〟。そして〝悪魔め!同じ苦しみを味わわせてやる〟と。
気がつくと、病院のベッドの上にいた。誰かの気配としゃべり声が聞こえて、僕は目をさました。ドアの磨りガラス越しに誰かが話を
「こんな子、死ねばいいんだ。なぜ死なないんだ。お前は邪魔者。早く死ね
ナマブタが小さな声で言う。
結局、僕は施設に預けられた。孤児になっちゃった。僕は憎い親に捨てられたんだ。ゴミみたいにポイってね。でも僕はゴミよりもひどい。何度もタバコみたいに踏みにじって、摘んで、茶色く汚れた冷たい水の中にポイだもん。
でも今は、復讐なんてものはしていない。
しかし、絶対に忘れることのない苦しみに満ちた記憶は、風化することなく存在し続けている。
アイ(31歳)デザイナー・東京都
今、お母様の自慢は僕が「結婚のけの字もない」ことでしょう?僕は、馬鹿正直にそれを守り続けています。僕の体はお母様のモノだから。だけど、僕の心の中では、お金を貯めて性転換するのが僕の当面の、本当の目標です。そんなことをちょっとでも言うと、お母様は「あんたなんかちび男にしかなれないんだよ」という罵声を叩きつけてきましたね。そんな時のお母様の顔は、(嗚呼、本当はしらせるべきではないのでしょうか?)鏡で見せてあげたいほどに醜く、悪魔のように毒を噴き出しているのですよ。
夕べもお父さんの性的虐待の夢見ちまってイヤーな気分なんだけど、夕べ初めて抵抗できたんさ。イヤだイヤだって精一杯力一杯抵抗して、それでも結局ヤラれちまったのが悔しいけど、ようやく私はあなたに、無駄な抵抗であろうと逆らえるようになったのだ。ざまあご覧なさい。そのうちにゃあなたの股間に一発膝蹴りでもお見舞いして、吊し上げてぶち殺して差し上げますわ。あなた方はありとあらゆる手段を用いて私を実家に帰らせようとしていらっしゃるようだが、無駄。あなた方といるくらいなら死んだ方がまし。私はあなた方の家へ戻るのイヤさに一度は自殺まで試みたのだ。もう〝イイ子役〟専門の役者は引退いたしましたよ。私は私で生きてくよ。私なんぞよりもよっぽどビョーキな、機能不全家族よ、サヨーナラー。
中谷百合香(23歳)大学生・岡山県・♀
私達、私と母と弟は、あんたとあんたの母親にかけられた呪いをといていくかのように一生懸命生きてきました。そして、ようやく光が見えてきました。もうあんたなんてこわくありません。
あんたより先に死にたくないばかりに、私は自殺も思い止まり、今日までなんとか生きて来ました。「あれだけ大事に育てたのに、めったに顔も見せない」と周囲に愚痴るのはやめて下さい。あんたの葬式には何があっても、ちゃんと出席しますから。
だって、私が小さい頃からずっと待ち望んでいた、お祝いの日ですもの。
それでも本当の母親なのか?いったいどれだけ俺に屈辱を与えたら気が済むんだ。今では、オマエよりも背が高く、力もついたので、オマエにやられることはないぞ。
オマエと離れて十数年、俺も今は、幸せだよ。くれぐれも俺の前には、姿を現さないでくれ。いいな。
それじゃ、早く地獄へ堕ちろ。
あれは七夕の夜でしたね。あんた自分一人で短冊をたくさん飾りましたよね。たくさんのお願い事を書いたんですよね。
「あいつは悪魔だ。死ね。呪ってやる」
私のことだったんでしょう?
願いは叶いましたか?
「出て行け。金払え。馬鹿。アホ。死ね」
と唾を吐きましたよね。
まだ小学生だった私に向かって。
心配しないで下さい。
人間はいつか死にます。
あんたが男をつれ込んだのは
期末テストの前の週
知っていたのか試験日を
それとも私が隠していたのか
とにかくやってらんねーよだれたらした答案用紙
腹がへったの
文字が踊ってる
丸付け適当
線引き適当
それでも赤点まぬがれた
テストにビビル心
無くしてくれたのあなたです
多感な思春期にありがとね
その無神経さにありがとね親だから
愛さなくてはならないとは
なんと不幸で苦しいこと
恨んでいいの
憎んでいいの
楽になりたい
誰にも言わない私の心
言ったら私の形容詞
もっていきましょ
墓場まで