日本ハムは食い物だから
プロ野球について語る。プロ野球ファンには時折トンチンカンな奴がいる。ギャグをギャグだとも思えず、贔屓(ひいき)のチームがけなされたと大騒ぎをする。
子供の頃、日本ハムという球団は好きになれなかった。なぜなら日本ハムって食い物だからだ。子供にとって日本ハムというのは格好悪くて仕方ない。いくらファイターズといってもハムを担いで戦っているみたいで格好悪い云々(うんぬん)……と言ったら、「食い物とは何だ!」とファンの人に怒られた。「日本ハム、格好良いじゃないか!」ときたもんだ。わけがわからない。
大リーグに入れてもらえ
とあるラジオ番組でプロ野球改革論を語った。改革論といっても落語の了見によるギャグだ。近年、大リーグに行く選手が増えた。なぜ行くかというと、上のステージで野球をしたいからであろう。つまり日本の野球のレベルでは満足できないというわけだ。
WBCで過去2回も世界一になっている日本のプロ野球ではあるが、まだまだ大リーグのレベルではないらしい。日本のプロ野球は果たしてどのくらいの力があるのか。それを知るには、日本のチームが1年間大リーグに入って試合をすればよろしい。日本シリーズで優勝したチームは1年間、大リーグに入れてもらうのだ。大リーグでも優勝したら、これは本当の世界一ということになる。
裏日本シリーズはどうだろう
それともうひとつ。裏日本シリーズを開催する。日本シリーズはセ・リーグとパ・リーグの覇者(はしゃ)が戦い日本一を決めるものだが、裏日本シリーズはセ・リーグの最下位とパ・リーグの最下位が戦う。負けた方が日本で一番弱いチームとなるわけだ。これは燃える。選手もファンもビリにはなりたくないから燃える。世間も注目するだろう。
そしてビリになったチームは下に落ちる。つまり韓国リーグに行く。韓国で優勝したチームは日本のリーグに入る。韓国リーグでビリになったチームは台湾に落ちる。台湾でビリになったチームは中国に落ちる。すさまじい入れ替え戦だ。
「横浜は最近みかけないがどこで野球をやっていますか?」
「確かインドあたりにいるんじゃないですか」
ギャグにはギャグで返すのが礼儀
現実離れした改革案だが、ギャグとしては面白い。だがギャグのわからない横浜ファンが怒りだした。侮辱(ぶじょく)するな! とtwitterで大騒ぎ。この手のギャグを受け止める度量がないだけなのだが、ネチネチ文句を言い続けている。私が仕事で横浜方面に向かっただけで、どの面下げて横浜に向かえるのか! ときたもんだ。
私が横浜を小馬鹿(こばか)にしたのは事実だが、それに対して罵声(ばせい)を浴びせたらそのことの方が卑劣な行為だということになぜ気がつかぬ。ギャグにはギャグで返すのが礼儀。よしんば私がギャグではなく意見として主張したと思ったのならば、意見で返すのがまっとうな人間のやる行為。ギャグや意見に罵声を、それも自分が何者であるか隠した状態でやるのは卑劣極まりない。
ミスジャッジも含めての楽しさ
話をプロ野球に戻す。統一球の問題が浮上したが、飛ぶボール飛ばないボールって何だかよくわからない。他の球技にもあるのかなあ。ゴルフなんか球の良し悪しがあるし、クラブの良し悪しもある。野球のバットはどうなんだ? よく捕球できるグローブなんてのはあるのか? あるだろうね。だいたい野球場がおかしい。フェンスまでの距離が球場によって違うなんてめちゃくちゃだよ。サッカーのゴールの広さが違うなんてないでしょ。
続いてビデオ導入の件。審判のビデオ導入に私は反対である。確かにホームランかファールか、セーフかアウトかをビデオで確認したらより正確を期することになる。だがストライクかボールかはどうなるのだ? それもビデオで確認しないと不公平だろう。
つまり野球というスポーツは人間の目でやるスポーツなのだ。かりにミスジャッジがあっても審判を含めた試合が野球なのであるから諦(あきら)めるしかない。外角低めをなかなかストライクに取ってくれない球審だったら、その試合は外角低めで勝負をしないようにするしかない。それを含めて野球の楽しさなのである。
この意見に対して、いや違う、というのがあってもよい。ただ「ふざけるな志らく! ビデオを使うのが当たり前だ! 死ね!」と言ってきたら、それはただただ卑劣な行為ということになる。
たまには鳴り物無しで野球を見たい
それにしても近頃野球場に行くと、やかましくていけない。応援することは悪いことではないが、応援が忙しくて野球を見ていない人がたくさんいる。たまには鳴り物無しで野球を見たいもんだ。
だってテニスであんな応援はしないでしょ。騒いだらつまみ出されます。テニスはそのくらい選手がボールに集中しているからだ。だが野球も同じではないか。150キロの球を打ち返すんだから。テニス以上の集中力が必要だと思うのだが。
「落合はきっとカレーが好きなんだよね」
談志がこんなことを言っていた。「プロ野球のファンはそのチームが好きなだけ。タイガースの選手とジャイアンツの選手を丸ごと入れ替えたらファンはどうするか? やはりタイガースファンは中身がジャイアンツになってもタイガースを応援するだろうな」と。
私は40年来のドラゴンズファンだが、昔から落合博満(おちあいひろみつ)が大好きだった。落合がドラゴンズからジャイアンツに移ったとき、私はどうなったか。もちろん、表面上はドラゴンズファンであったが、心情的にはジャイアンツファンになっていた。落合がドラゴンズにいた間、落合を中心に試合を見ていた。応援していたのでなく「見ていた」ために、落合がジャイアンツに移ったらドラゴンズで見るものがなくなってしまったのだ。
もしこの先、落合が横浜の監督にでもなったら私は横浜ファンになると思う。「落合が監督になったのに、まだインドからはい上がれないぞ」と言われたら、私は笑顔でこう返す。
「落合はきっとカレーが好きなんだよね」
2013年11月1日更新
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