なぜ本を買わないんだ!

第1回 身銭を切って本を買うことの意味

 私はよく本を買う。

 買うときは書店だ。インターネットでは買ったことがない。書店にぶらっと入って、目についた本、売れている本、話題になっている本、興味がある分野の本などをパラパラとめくってみて、買う。小説はあまり読まないが、科学、経済、ビジネス、社会、いろいろなジャンルの本を読んでいる。

 買った本は、移動の電車の中、トイレなど、ちょっとした時間にも「乱読」している。

 本は、最高の娯楽だ。と同時に、「思索のためのツール」でもある。

 インターネットの普及で、断片的な情報を得るのは簡単になってきたが、読書によってしか得られないものが、確実にある。私などはもういい歳だから、一冊読んでも、しばらくすると、細かい内容は忘れてしまう。けれど、その本に通底する論理が頭に残り、何冊も読むうちに、それがだんだん固まってくる。

 するとそのうち、世の中をみて「あ、そうだったんだ」「これが言いたいんだ」ということが大体わかってくるようになる。一見、関係のないように見える断片的な概念や政策がつながる。

 さらに、その固まってきたものをまた壊すということを繰り返して、自分を高めていく。そのためのツールが本なのである。

 読書の効果を最大限に得るには「買う」ということが絶対に必要だ。

 私の会社の若い人に聞いたら、本は買うよりも、図書館で借りるほうが多いそうだ。理由は、やはりお金がかかるから。

 現代は、昔に比べてPC、インターネット、ケータイなどさまざまなもののためにお金がかかるので、本を買う経済的余裕が少ないのかもしれない。

 自分のお金で本を買う、ということには大きな意味がある。図書館で無料で借りるのと、お金を出して買うのでは、本から何かを得ようとする意欲がまったく違ってくる。

 また、図書館で借りるということは、いずれ返さなければいけないということだ。しかし、本というものは、ずっと手元に置いておくことが重要だ。折にふれて読み返すことで、本が自分になじんでくる。

 なじまない本、一過性のハウツー本などは、捨ててしまってもいい。そうやって淘汰(とうた)していくと、自分の本棚、つまり知識の質が高まっていく。今も読み継がれている古典は、そんなふうに淘汰されて残ってきたものだと思う。

 だから本から何かを得たい、学びたいと思ったら、多少無理をしてでも買って、手元に置いておくべきだと、私は思っている。

2011年10月12日更新

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