なぜ本を買わないんだ!

第2回 震災後の世界でどう生きていくか


[書名]『大震災の後で人生について語るということ
[著者名]橘玲
[定価]1575円(税込)
[購入場所]文教堂書店赤坂店
[購入理由]橘玲さんのファンだから

経済小説家による「人生設計」の指針

 じつは、私は経済小説作家の橘玲(たちばなあきら)さんの本が好きで、出た本はすべて買って読んでいる。好きになったきっかけは、ある本で橘さんが自分の投資経験の失敗談を延々と語っていたのがおもしろかったことだ。

 橘さんが先物取引に投資をしていたとき、投資した商品の価格がどんどん下がっていき、「もうちょっとがまんすれば価格が上がるかもしれない」と思いながらも、破産寸前になって、耐え切れず損切った(損切り=損害を抑えるために早めに取引を停止させること)。しかしその後、商品の価格が上がり、「切らなきゃよかった」となったが、橘氏はそれをバネにして今日に至る。

 そういった経験をへて、橘さんは「インデックス投資」が一番いい、という結論に到達したようだ。「インデックス投資」とは、ごく簡単に説明すると、ある銘柄に集中してギャンブルのように投資するのではなく、多くの無難な株に分散して投資しようという考え方。これまでの歴史上、株価はトータルでは必ず上がってきているのだから、長期で考えれば必ず利益が出る。

 当時、私は自分でも株投資をしていたこともあって、悔しい思いをした気持ちもよくわかるし、ノウハウも役に立ったから、おもしろく読めた。

 3月11日の東日本大震災以降、震災関連のさまざまな本を読んできたが、橘さんも震災に関連する本を出したというので、すぐに買った。タイトルは『大震災の後で人生について語るということ』。

 タイトルだけを見ると、なにやら精神的な、心構えを説いたもののように見えるが、実際は橘さんらしく、お金のことをどう考え、人生設計をどう立てるか、具体的な考え方や指標を示す、かなり実用的な本である。

マックジョブか、クリエイティブクラスか

 この本は、橘さんがこれまで主張してきた手法や考え方の総集編のようなものだ。

 なかでもおもしろかったのは、仕事を「マックジョブ」と「クリエイティブクラス」とに分類する考え方だ。マックジョブは、ハンバーガーショップの店員のように、一旦マニュアルを教わればだれでも同じものを作れる仕事だ。一方、クリエイティブクラスは、医者、弁護士、歌手、スポーツ選手など、特別な資格や才能が必要な仕事。グローバル化によって、マックジョブは安い賃金ですむ海外の労働者が入ってくるために、どんどん平均の賃金が下がっていくが、クリエイティブクラスは海外市場への進出が可能となるために、チャンスが広がっていく。

 さらに、クリエイティブクラスは、拡張可能な「クリエイター」と拡張不可能な「スペシャリスト」に分かれるという。医者や、スポーツ選手はスペシャリストだ。たとえばイチローや石川遼くんなどはすごい才能があり、活躍しているけれど、それぞれ野球界、ゴルフ界という枠組みがある以上、稼ぎには限界がある。一方、クリエイターは、映画や出版、音楽などの仕事に従事する人たちだ。こちらには限界がなく、もし一発当たり、全世界で大ヒットなんということになれば、際限なく稼ぐことができる。ただし、当てることができるのはごく一部で、大半は鳴かず飛ばずで終わる。

 これらは、どれを選ぶのがいい、悪いという話ではなく、このように分けて考えると、自分はどこを目指していくか、考える指針になるということだ。

答えがない時代の入門書

 現代には、こうすればうまくいく、成功する、という単純な答えはない。

 単純に「~すれば儲かる」とうたっている「お金儲け」の本はたくさんあるが、そういう本や、おいしい話の売り込みをうのみにすると、儲かるどころか、たいていは損をする。

 私は、証券会社が「うちで投資すれば儲かりますよ」としつこく売り込みに来るので、私が経営するウェザーマップの会社資産を少し投資して株を買ったことがあるが、一旦買ったあとはフォローもなく、結局こちらは損するばかりだった。素人の趣味ではあっても、自分できちんと考えてやった株投資のほうが、運用パフォーマンスがよかったくらいだ。

 日本は、高度経済成長が終わったあと、デフレと不況が続き、「変わらなければいけない」とみな思っているけれど、どうやって変わればいいのか、だれもわからない。

 そして、東日本大震災という現実に直面したことで、エネルギー問題を含め、日本はどのような道を進むべきか、国民一人一人が問われている。私も震災関連の本はたくさん読んでいるが、たとえば原発・反原発の問題などは、読めば読むほど、調べれば調べるほど、答えがわからなくなるという状態だ。

 結局、できるところから、自分なりの答えを見つけていくしかない。本書は、そのための指針を得る一冊と位置づけることができる。経済や金融の本は難しいというイメージがあるが、実用的に書いてあるので、入門書として最適だ。

2011年10月12日更新

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