会社の「これ本当に必要?」

第3回 ほうれんそう

本連載は、画一的な効率性を重視した「旧来型の組織」では殺されてしまう創造性を発揮するための「新しい組織」について考えます。ここでの「新しい組織」とは、旧来型の組織と完全に置き換えるのではなく、創造性が必要とされる業務を切り離して旧来型の組織とは別の考え方で運営する組織を指します。

  

今回取り上げるのは、「旧来型の組織」で生きていくためには必須と考えられている「ほうれんそう」(報告、連絡、相談)です。新入社員、特に大きな組織に入ったビジネスパーソンに対して最初に教育される「最も大事なこと」の一つがこの「ほうれんそう」と言われています。また「ほうれんそう」が得意な特に若手社員は社内でも重宝され、昇進するための重要な要素にもなります。

でも「これ、本当に必要?」というわけで、三つの視点から検証してみます。

「ほうれんそう」は「内向き」のものである

確かに組織の中で生きていくには、報告や連絡や相談はコミュニケーションの手段として必須のものです。ただここで考えなければいけないのは、「そもそも何でほうれんそうが重要なのか?」という点です。

考えてみれば、通常求められる「ほうれんそう」は、組織の内部のためのもので、対顧客や外部に対して言われるものではありません。

つまり、「ほうれんそうが重要だ」というのは、そもそも組織が内向きになってしまっていることの現れであり、組織がそういう状態になっていることそのものが問題だということです。

組織は大きくなればなるほど、自らが生きながらえるためのエネルギーが大きくなっていきます。全仕事に占める組織内のコミュニケーションの時間は規模が大きくなるにつれて加速度的に大きくなり、仕事の重要度も「付加価値の創造」から「内部調整」にどんどんシフトしていきます。それを象徴的に示すのが「ほうれんそうが重要だ」という言葉なのです。

「ほうれんそう」は「上司視点」のものである

「ほうれんそう」は内向きのコミュニケーションであることに加えて、ほとんどの場合は上司が部下に対して求める一方的なものになっています。上司はしきりに「ほうれんそう」を口にして自分に情報が上がってくることを求めますが、大抵の場合、部下に対しての「ほうれんそう」はお寒い場合が多いのではないでしょうか?

つまり、「ほうれんそう」は部下の側からすれば、余計な時間を取られる割にはメリットがほとんどない、迷惑千万なものということになります。逆に言えば、「自らの創造的な仕事を犠牲にしてでも上司のためにやる」仕事ということです(道理でこれが得意な人が「上司にかわいがられる」わけです)。

そもそもコミュニケーションは双方向のものですから、自ら情報を発信し、能動的に他人に働きかける人のところにはおのずと情報が集まってきます。つまり「ほうれんそう(が口癖の)上司」は、自らが情報を発信していない受動的な上司であることを自ら公言しているようなものです。

そう考えてくると本当に「必要でない」のは、「『ほうれんそうが大事だ』と言わなければ報告や連絡が上がって来ない上司」のほうではないでしょうか?

「ほうれんそう」には大抵「仮説」がない

「ほうれんそう」は部下の視点から見ると迷惑以外の何ものでもなく、なぜならば「『ほうれんそう』しても自分には何のメリットもない」ということです。メリットとはこの場合、その報告によって上司から何らかのアイデアや仕事を先に進めるためのヒントが得られたり、何らかの「ヒト・モノ・カネ」のサポートが得られるということです。しかし現実にはそのようなメリットが得られることはありません。

その大きな原因の一つは、聞いている上司の側に「仮説」がないということです。ここでいう仮説とは、「その報告を受ける目的」であり、「その結果としての想定アクション」のことです。

先のアクションを想定して「ほうれんそう」を受ける上司だったら、部下から聞いたことをもとに「次」につなげようとしますから、その結果として「意思決定」がされたり、上司自らが動いて予算や人を確保したり、それらの行為に寄って部下の仕事がやりやすくなったりと、部下にとってのメリットも大きくなるでしょう。それが顧客や市場に対する外向きの付加価値の創造につながっていきます。

もちろん部下の側にも仮説をもって「ほうれんそう」する姿勢が求められます。報告や連絡や相談に対して何のアドバイスも得られないのは、報告する側に、そこから得られるメッセージや仮説がないからとも言えます。

  

このように、「仮説なきほうれんそう」は必要どころか、必要のないものです。

逆に、常に仮説を持って先のアクションを考えたり、顧客を見て仕事をしている人、常日頃から周囲に能動的に働きかけている人には、「ほうれんそう」などという言葉を口にしなくても、報告も連絡も相談も向こうから勝手に上がってくるはずです。

2013年12月1日更新 (次回更新予定: 2014年1月1日)

会社の「これ本当に必要?」 の更新をメールでお知らせ

下のフォームからメールアドレスをご登録ください。


メールアドレスを正しく入力してください。
メールアドレスを入力してください。
会社の「これ本当に必要?」 一覧をみる