イノベーターの至言

第6回 イノベーションとは孤独な戦い

今日の至言

1. “Great spirits have always encountered violent opposition from mediocre minds.”
「偉大な人間は常に、凡人たちの激しい反発に遭遇してきている」
アルバート・アインシュタイン
(訳=英語名言研究会、『音読したい英語名言300選』中経出版)

2. “Those who create are rare; those who cannot are numerous. Therefore, the latter are stronger.”
「創造する人は少ない。創造できない人は山ほどいる。それゆえ、後者が強いのである」
ココ・シャネル
(訳=デイビッド・セイン/佐藤淳子、『世界のトップリーダー英語名言Business』Jリサーチ出版)

孤独なイノベーターへの激励

 イノベーターは常に孤独に戦わなければなりません。本連載の趣旨の一つが、そうした孤独なイノベーターに対して「同志の思考回路は同じだから、周囲の雑音に惑わされずに突き進んでほしい」という激励のメッセージを送りたいということがあります。

 今回は、領域はまったく違いながらも偉大なイノベーターである二人の言葉を組み合わせたいと思います。いずれも孤独に戦うイノベーターの苦悩を表現したものです。「何もわかっていない周囲の凡人たち」からの抵抗や反論にいらだちを覚えているイノベーターたちと先人の言葉を共有することで、「日夜戦っているイノベーター」を勇気づけたいと思います。


  

凡庸な人たちとの戦い

 一つ目はアインシュタインの言葉です。

 いまではニュートン力学や量子力学と並んで物理学の柱として不動の地位を築いている相対性理論も、アインシュタインが提唱したときには理解できた人が世界中にほとんどいなかったというのは有名な話です。

 ここまで極端ではないにしろ、偉大なイノベーターというのは、浸透してしまえば「当たり前」になってしまうことでも自分が独自に作り出したときには周囲から激しい反対や抵抗、時には嘲笑(ちょうしょう)にもさらされて、そこを乗り切ったという経験を多かれ少なかれ持っているものです。

 常識や慣習に捉われた「凡人」というのは、単に「昔からそうだから」とか「そういう決まりだから」という理由だけで新しいものに抵抗しますが、一度そういった「新奇なもの」にお墨付きがついて一般に流布したとたんに態度が豹変(ひょうへん)して、賞賛・肯定に回るという傾向があります。

 そうした凡庸な人たちとの「戦い」を常に強いられるイノベーターは、どんな世界においても常に少数派です(だからイノベーターなわけですが……)。それを創造性との関連で表現したのが2番目のココ・シャネルの言葉です。


  

イノベーターにとって最大の敵とは

 「泣く子も黙る」ブランド力を確立したシャネルですが、黎明期(れいめいき)にはイノベーターの悲哀を味わっていたことが改めてこの言葉からうかがい知れます。

 アインシュタインのいう「凡庸さ」とは、シャネルのいう「創造できない」ということに言い換えることもできるでしょう。したがって、ここでいう「凡庸な人」というのは、必ずしも世間で言う「できない人」とは一致しないところがやっかいなところです。

 その対立構図について考察してみます。下のマトリックスを見てください。

 これは、世の中の人を「知識や経験の有無」と「創造性の有無」で、4つに分類してみたものです。ここまでの議論で創造性の有無がイノベーターとしての潜在能力を決定するのはおわかりかと思います(つまりここでいう「凡庸な人」とは本図の「左側」のことだとします)が、もう一つの軸として「知識・経験」の有無」を取ったのは、往々にして世間的な評価や社会的地位というのはこの尺度で決まっていることが多いからです。

 ここにイノベーターの悩みの根源があります。イノベーターの足を引っ張るのは、必ずしも発言力の弱い人ばかりではなく、むしろエスタブリッシュメントに所属していて発言力がそれなりにある、「知識と経験はあるが創造性のない人」であることが多いのです。

 この領域の人は、ある領域において成功体験を築き上げ、その道のエキスパートであることが多いのですが、その成功体験をいつまでもひきずって新しい価値観を受け入れないタイプが多いので、「性質(たち)が悪い」のです。特に年齢を重ねた「その領域の権威」とされている人が、イノベーターにとっては乗り越えるべき最大の障壁と言えるでしょう。

 別の言い方をすれば、知識・経験も創造性もない人はむしろイノベーターからすると「人畜無害」です。それに対して、創造性がなくて知識と経験がある場合は、知識と経験が「できない理由」を挙げるための最高の「燃料」になります。その意味で図の赤線が(特に上に行けば行くほど)最大の溝ということになります。

 過去の経験や知識は、それらをうまく「再構成」して環境に合わせた新しいものを生み出すために使えば資産になりますが、いつまでも過去に得たそのままにこだわっている限りは確実に「負債」になっていきます。

 イノベーターの皆さんは以上のような構図を理解した上で、「抵抗勢力」とうまく付き合っていただきたいと思います。

(次回公開予定:2012年12月20日)

2012年11月20日更新

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