落語的了見

第18回 巨大電器屋

「ヨドバシカメラのテーマ曲の映画だ」

 最近の巨大電器屋の繁盛ぶりは凄まじい。大きな街に行けば必ずある。フランク永井の「有楽町で逢(あ)いましょう」で有名だった「有楽町そごう」も、今や電器屋である。街からデパートが消え、代わりに巨大電器屋が出現する世の中だ。

 アメリカ民謡の「リパブリック讃歌」のメロディーを聴くと、誰もがヨドバシカメラのテーマ曲だと思うだろう。「5つの銅貨」という最高の映画があるが、この作品には「リパブリック讃歌」のメロディーが使われている。レッド・ニコルズというミュージシャンが、サッチモと、この曲を管楽器でジョイントするのだ。私の一番好きな映画である。なのに人にこれを勧めると、「ヨドバシカメラのテーマ曲の映画だ」と笑われる。

風流は貧乏人の特権

 話を戻すが、この電器屋の繁栄、ちょっと変ではないか? 原発をなくそうというのが今の世の中の流れだろう。原発がなくなれば、今までどおりに電気は使えなくなるという説もある。するとあの巨大な電器屋は必要なくなると考えるのが普通である。

 私は原発に関しては「なくすのならば電力に頼った生活を変えるべきだ」という考えだ。夏はエアコンを使わず扇風機とうちわ。貧乏人は風鈴(ふうりん)。風流でよろしい。風流は貧乏人の特権である。冷蔵庫は小さいタイプ。貧乏人は箱に氷。やはり風流だ。

 テレビの放送時間を半分にし、携帯電話の使用者の年齢制限を決め、街からネオンをなくしパチンコ屋という明らかな賭博場(とばくじょう)は法律で規制し、ゲームセンターならびに個人のテレビゲーム時間も規制する。貧乏人は風流になるし、金持ちは馬鹿にならずにすむ。

もはやデパートと変わらない

 乱暴な話だが、そのくらいの覚悟で挑まなければ原発をなくせるものか。坂本龍一(さかもとりゅういち)が原発反対デモで騒いでいたが、マイクを使っていた。地声で騒ぎなさい。電力に頼らないように。

 まあいい。原発がなくなったあと、電器屋がどうなるか、拝見しよう。

  それにしても、巨大電器屋は取り扱っているものがもはや家電製品だけではない。鞄(かばん)や時計、おもちゃ、さらにはレストランまで並んでいる。巨大電器屋はデパート化しているのではないか。やがて服も売り、家具も、本も売るようになる。気がついたら巨大電器屋はデパートになっていました、なんて日が間違いなく来ると思う。

2013年5月11日更新

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